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Blog・News講義「在宅治療における歯科医師の役割」その2

講義「在宅治療における歯科医師の役割」その2
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昨年より当院で二枠担当させていただいています長崎国際大学の講義概要の前回からの続きです。

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口腔機能低下症オーラルフレイルについてもお話ししました。

ささいな口の衰えを「オーラルフレイル」と呼びますが、これが進行すると「口腔機能低下症」と呼ばれる疾患となります。口腔機能低下症には、次の症状が見られます。

・口の中が汚れる(口腔不潔)
・口の中が乾く(口腔乾燥)
・食べ物が口に残るようになる(咬合力低下)
・滑舌が悪くなった、食べこぼすようになる(舌口唇運動低下)
・薬を飲みにくくなる(低舌圧)
・硬いものが食べにくくなる(咀嚼機能低下)
・食事の時にむせるようになる(嚥下機能低下)

 

 

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オーラルフレイルについては、2年ほど前まで長崎県歯科医師会の担当委員会でしたので、担当委員としてKTN週刊健康マガジンでお話もさせていただきました。


KTN 週刊健康マガジン
高齢者の健康 ~通いの場でのお口の機能の向上~

https://www.youtube.com/watch?v=5UqIoUIi_h4

ご興味があられるようならご覧になってください。私の回だけでなく、もっと以前より、長崎県歯科医師会は長崎県医師会の依頼で何人もの先生方が講話をしています。

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健康と要介護の間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる段階があり、その手前で、“オーラルフレイル”(ささいな口の機能の衰え)の症状は現れます。 食事でよく食べこぼすようになった、固いものが噛めなくなり、むせることも増えた。さらに滑舌も悪くなってきた・・・。

こうした状態が続くようであれば、それはささいな口の機能の衰え、“オーラルフレイル”の可能性があります。 要介護状態に陥ることなく、健やかで自立した暮らしを長く保つためには、オーラルフレイルに早く気づき、予防や改善に努力することが重要です。

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誤嚥性肺炎についてもお話しさせていただいています。

まず全国と長崎県の令和元年の死因別死亡の概況についてみていきましょう。

数年前より、誤嚥性肺炎は肺炎と区別して記載されるようになりました。

長崎県ではこの誤嚥性肺炎は3.5%と6番目の死因となっております。

では誤嚥性肺炎とは何でしょうか。

誤嚥性肺炎とは、病原性細菌を誤嚥することで発症する肺炎です。
食べ物を飲むことを「嚥下」といい、嚥下時に口腔内の異物や雑菌が肺に入り込むことを「誤嚥」といいます。
異物を吐き出す気管支の機能が低下しているため、高齢者は病原性細菌を誤嚥しやすくなっているのです。


誤嚥性肺炎を防ぐには、口腔ケアが有効とされています。

口腔ケアで病原性細菌を防いでいれば、食べ物を飲み込んでも病原性細菌が肺に入る可能性が低くなります。

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むせない誤嚥についてもお話しします。

ふつうは「むせ」というと水や異物が気管に入りゴホゴホと出す反射が出るものですが、
このように明らかな誤嚥を「顕性誤嚥」といいます。

一方で「不顕性誤嚥」という誤嚥があり、むせや咳き込むことがない誤嚥で、夜間や就寝中や寝たきりの場合によく起こります。

サイレントアスピレーションともいいます。

これが誤嚥性肺炎の大きな原因のひとつです。

 

そして、改めて長崎県の誤嚥性肺炎をの割合を考えてみましょう。令和元年の時点で死因の6位となっています。

早期にリスクを発見することができれば、誤嚥性肺炎を防ぐことができます。

みなさんが接する在宅の方のお口に関心を持つことがその方の生命予後に関係する可能性があるのです。

このことを忘れないでいただけたら歯科医師としては嬉しいですね。

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そして劣悪な口腔にしないために必要なことは何でしょうか?

やはり「気付き」が大切です。


医師、看護師、家族、介護者等、身近にいる人がお口に関心を持つことが重要です
そしてアセスメント(評価)を行います。異常があれば歯科医院に連絡をしてください。

 

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Q.歯がない人も口腔ケアが必要でしょうか?

A.歯がない人、口からものを食べていないひとも口腔ケアは
必要です。


→口でものを噛まないため唾液分泌が減って、自浄作用(自然に流す作用)が低下するため汚れがつきやすくなってしまいます

口腔ケアには以下の効果があります。

1)口腔疾患および呼吸器への感染予防

2)口腔機能の維持・回復

3)健康維持・回復や回復の軽減

 

 

「認知症」の人には特に口腔ケアは必要です。


口腔ケアを行うことで、認知症のリスクが1.9倍下がることがわかっています。
愛知県の65歳以上の高齢者を対象に、2003年から4年間かけておこなった調査で明らかになりました。


また、この調査では、自分の歯が20本以上残っている人と、歯がなく
入れ歯(義歯)も使用していない高齢者では、認知症リスクが
1.9倍の差があることがわかりました。

 

 

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認知症患者にまつわる歯科的な関わりと特徴を見ていきます。

認知症患者と歯の数の関係ですが、ぜひ、これをしっかり覚えておいてください。

歯の数が多いほど生存年数が長い

歯が多いほど、また義歯による機能回復(=歯を増やす)をするほど認知症発症が少ない

歯を失い、義歯を使用していないと転倒のリスクが高まる

 

歯の本数が多いほど生存年数が長い ということについてですが、

15年間のコホート研究の結果、80歳以降では男女いずれにおいても、

機能歯数と生命予後との間には有意な関連性が認められたということが分かっています。

 

歯が多いほど、また義歯による機能回復をするほど認知症発症が少ない

この場合の機能回復というのは=噛める歯を増やすことなどを表しています。

グラフを見てください。

歯がほとんどなく、義歯を使用していない、未使用の人は、20本以上歯が残っている人に比べて、1.9倍認知症発症のリスクが高くなることが分かっています。

さらに歯がほとんどなくても義歯を入れることで、認知症の発症リスクを4割抑制できる可能性も示されたとあります。

 

歯を失い、義歯を使用していないと転倒のリスクが高まる

これは意外に知られていないと思いますが、歯が少なくなると転倒しやすくなることが分かっています。

歯の数は健常者では親知らずを除いて28本ありますから、8020を達成できていない、19本以下の65歳以上の高齢者は転倒のリスクが高くなることがあることがわかっており、

しかし、歯が19本以下でも義歯を入れることで、転倒のリスクを約半分に抑制できる可能性も示唆されています。

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Kikutani ら 19)は,口腔状態と低栄養リスクとの関係を全国 8 都市の在宅療養要介護高齢者 716 名を 対象に調査をしている。それによると、口腔状態により 低栄養リスクとなる相対危険率は義歯群(義歯により臼 歯部の咬合が維持されている者)が残存歯群(残存歯で 咬合維持している者)と比較して 1.7 倍、咬合なし群 (臼歯部の咬合が喪失している者)では残存歯群に対して 3.2 倍となっており、咬合の喪失と低栄養との関係 を示唆しています。

〜その3に続きます〜