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Blog・News昨今のモニター商法とクーリングオフ、そして歯科ドクターに左右される自由診療としてのアライナー矯正治療

昨今のモニター商法とクーリングオフ、そして歯科ドクターに左右される自由診療としてのアライナー矯正治療
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今回は昨今の詐欺(?)として訴えられているアライナー矯正治療(インビザライン)のモニター商法について、触れたいと思います。また、これらを検索をかけて調べている方々、まだ若い、これから社会に出る方々にも少しでも届くように、やさしい言葉で説明を交えて述べていきます。言葉の解説・説明文について、わずわしいこともあるかと存じますが、ご理解いただければ幸いです。

今回のいわゆる「モニター商法」ですが、「モニター募集(意見や感想を述べる人)」として、先に高額の契約の支払いをさせて、後々の紹介料による収入でプラスマイナスゼロ、結果的に無料になるなどと口頭で説明して、契約者である患者にマイナス・不利益を被らせています。

「収入があとから入るので、その中から支払いをすれば良い」といった形で商品(今回の歯科矯正治療契約など)を販売することは「特定商取引法」で「業務提供誘引販売取引」として規制されています。

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またメディアで見る今回の事件について、患者はクレジット・ローンの支払いが続いているものの、無料にもならず、歯科医院と連絡も取れず、矯正治療も行われていないという、気の毒な事態になっているようです。

一度、契約を行なっても、法定書面を受け取った日から20日以内であれば、クーリング・オフできます。書面(はがき可)または電磁的記録で行います。クレジット(個別信用購入あっせん)契約の場合は、個別信用購入あっせん業者に対しクーリング・オフの通知を行うことができます。
クーリング・オフについて以下のHPにより詳細をご確認ください。
国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
わからない場合、望まない商品や契約について、各自治体(市町村)の消費者センターに相談してみると良いと思います。

このモニター商法の歯科医院の対応と運営について、結局はモニター商法を利用したものの、自転車操業(じてんしゃそうぎょう)に陥っていたようです。

自転車操業とは、操業を止めてしまえば倒産するほかない法人(会社)が、慢性的な赤字状態(会社の経営のマイナスの状態)でありながら他人資本を次々に回転させて操業を続けていく状態のこと、と辞書で説明されています。多くの経営者、またはインビザラインを利用する歯科ドクターであれば想像がつくのではと考えます。

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"原価1/3"
これから社会に出る方や経営に携わったことがない方に"無料"ということを考えるにあたって、お伝えしたいことがあります。お店や会社(法人)は経営するにあたり、必ず資金が必要です。その原資(げんし=元手=資金源)がどこから出ているのか?

通常は”売り上げ”であり、そしてテナント代や開業借入の返済、従業員への給料や必要経費に当てられます。一般的に原価1/3と言われ、仕入れ値は人件費(給料)を含めた他の必要経費を差し引いて、売り値の1/3程度である、とされています。

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今回の消費者の"無料化"の”からくり”を探るのは大切なことです。では上述の話から、商品の価格の1/3が経費と考えてみましょう。歯科医院に限らず、お店の"原価"や”企業努力”が見えてきませんか?

今回の気の毒な被害者の方々が、わかりやすく150万円の契約を結んでいたのであれば、原価1/3と考えた場合、最低でも50万円の経費がかかる高額な治療を受けていた、とも捉えられます(別にそれは悪くありません)。

では、歯科医院やお店にとってその原価50万円もの治療を補填する対価は、顧客・ユーザーが他の顧客を紹介して同等で成り立つものでしょうか?いくら歯科医院といえど、真面目な歯医者であれば50万円もの大金は適当に扱える金額ではありません。"無料"にできるものでしょうか?

歯科医院側もなかなか痛い出費です。「他の人で埋め合わせるから大丈夫です…」それホント😲?

ですから、一見、数字はプラスマイナスゼロで合っていて、合理的に説明されたとしても、"数字合わせのマジック"に陥ってはいけません。先ほどの例え話の50万円もの原価は、個人や小規模のお店で簡単に処理できるものではないのです。見栄を張らず、「勇気ある撤退」をするべきです。その判断は"英断"ではないでしょうか。

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問題の医院は、先に述べた"自転車操業"に陥り、一人一人の治療の単価(たんか)を150万円以上(当院の倍)という価格にしても、必要な売り上げに届かず、自分たちの会社を守れなくなりました。原材料を大量に安く仕入れられる大手の会社ならともかく、最初から"無料"や"値引き"などを行うところに技術やクオリティを求めることは厳しいことではないでしょうか。


その場で決めず、一度持ち帰るようにして下さい。特に18歳成人の方は自分で契約をしたり、カードを作れるようになりました。まずはもう一度、慎重に考えるようにしてください。

Think twice before you do it.

次に今回のニュースの中にあった、インビザラインの”レッド・ダイアモンド・ドクター”についても説明します。


インビザライン社は年間で新規症例を獲得した数に応じて、ステータスレベル制度を設けています。レッド・ダイヤモンドは年間に1000人以上新規患者を獲得したドクターに与えられる”称号”です。これは治療の内容については特に問われず、数だけが基準となりますが、一人のドクターが監修したことになります。

しかし実際には一人のドクターだけでこれほどの症例数を上げていることはほとんどないと考えられ、多くの場合は”歯科医院に複数人ドクターがいることによる合算の症例数”のステータスとなります。またインビザライン社にアライナーを発注するにあたって、このステータスにより割引率も変わります。


実際に矯正治療が始まると、患者は2〜3ヶ月に一度の来院もあることから、新規の患者だけを診ることはなく、既存の患者と合わせて、矯正治療が何ヶ月〜最長5年程度の治療が続くことを考えると、患者枠の多さ・受け入れ数から、一人のドクターでは厳しいでしょう。

院長以下、複数人のドクターで、レッド・ダイアモンド・ドクターのステータスを獲得することと考えますが、その歯科医院はマネージメント能力が高い、ベテラン歯科医師の先生が統括、監修されていることでしょう。それ自体は決して悪いことではありませんし、私自身もそういった先生方の講演を拝聴します。

ただ、症例数が多い先生方の中には他医院から”外注(外部への発注・注文)”を受け、症例数を増やし、割引を得ながら、手数料を得ている商業パターンもあるようです。

インビザラインは口腔内をスキャンすることによりデータを送信しますから、送信元を”自分自身”のアカウントではなく”発注先”のアカウントにしておけば、治療経験に乏しい歯科医師でもベテラン歯科医院の代診ドクターやCADデザイナー、歯科技工士の力を借りて、”自分自身”の治療計画のように進めることもできます。

今回のメディアのニュースではその”レッド・ダイアモンド・ドクター”に外注していた節も見受けられます。自分自身の臨床の考え方はあったのか?と、未熟な歯科医院に当たった患者さんが気の毒になります。(繰り返しますが、技術がなくて、集客できないから割引無料化で売るんですよ)

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今はインビザラインなどのアライナー(マウスピース)矯正治療は全盛期で、販売促進(販促)のため、インターネットで情報は錯綜(さくそう・入り混じること)しています。

しかし、臨床の発表で”チャンピオン・ケース”と言われる言葉があり(これは「理想的な治り方」と意味を捉えても良いと思います)、全てが理想的な”チャンピオン・ケース”ではありません。

実際の臨床は術者の治療計画、技術、経験によって、大きく左右されます。同じインビザラインのシステムやソフトを使っても差が出てくるのです。

例えるのであれば、プロ野球のホームラン王と同じバットを使っても、同じようにホームランを打てない、プロの絵描きと同じ絵筆やデバイスを使っても、同じように描けない、といったところでしょうか。

矯正治療の成功か失敗かは審美性(この場合は歯並びのキレイさや顔貌の変化の見た目)の改善、結果としての顧客満足度によるものが大きいでしょうが、あらかじめ先生の治療経験がどれくらいのものか見ていくことも大事です。従来から矯正専門医が行なっている分析や模型による提示などが行うことができるか、改善結果を明示する「自分の医院」で手がけた治療写真やデータを提示できるか、こういった所も患者さんが先生を経験者かどうか判別する基準にもなるのではないでしょうか。

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一つの例として、当院における患者さんに対する詳細な説明にも触れていきます。
新規の患者さん一人一人に治療計画書を作成し、治療計画を提案します。大体、写真のようなCT撮影、せファロ分析を多く活用しプリントしています。このようにインビザラインなど矯正治療においては、CT撮影やセファロ分析を行い、患者さんの主訴や問題点をピックアップし、治療計画を説明します。

治療が決定したのちに、ディグマ2による咬合診査など行い、顎関節症などの要素がないか、また現在の咬み合わせをPCで記録していきます。これにより患者さん特有の習慣習癖を見つけることも少なくありません。「〇〇の動きを獲得してこなかったのか…」と思うこともしばしばあります。

口腔内スキャンを行い、シミュレーションと、当院における多くの症例から似た症例をお見せすることもあります。

自由診療(自費診療)は医院によって価格設定や考え方、取り組み方が違います。多くのイメージが先行し、惑うことも多いと思われますが、皆様が良い歯科医院に出会い、良い人間関係を築き、その出会いが皆様の人生に寄与されることを心から願っています。

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