Blog・Newsむし歯予防の基礎知識とフッ化物応用

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むし歯予防を考える際には、公衆衛生学として、まず「一次予防」、「二次予防」、「三次予防」を整理しましょう。
一次予防は、むし歯を発症させないための介入であり、フッ化物歯面塗布、フッ化物配合歯みがき剤、食習慣支援、保護者指導などがこれに含まれます。
二次予防は、歯科健診や定期管理の中で初期のむし歯や高リスク状態を早期に発見し、進行を防ぐ段階です。
三次予防は、すでに進行したむし歯に対して適切な修復(つめもの)、歯髄保存(*歯髄=歯の神経+血管)、継続管理を行い、疼痛(*とうつう、痛みのこと)、歯の喪失、咀嚼(そしゃく)機能低下などの重症化を防ぐことです。
むし歯対策はしばしば一次予防に注目されますが、実際の臨床・地域保健ではこの三層が連続して機能していると考えて良いでしょう。
さて、難しい話も出ましたが、よく「むし歯予防」で言われる「フッ化物(フッ素)」ですが、一体どんなものでしょうか。
フッ素は体内・自然界に存在するもので、栄養素の一つです。いろんな化合物として存在し生活に利用されています。
フッ素(フッ化物)を理解して、歯質を強くしましょう。
1.初期のむし歯を修復(再石灰化の促進)
フッ化物は、むし歯になりかかった歯から溶け出したカルシウムなどが再び歯の表面に戻ろうとする作用(再石灰化)を助け歯の修復を促進します。
2. 歯質を強化する(耐酸性)
フッ化物が歯に取り込まれることで歯の表面のエナメル質
を強化して、酸に溶けにくい強い歯にします。
3. むし歯菌の抑制
フッ化物の抗菌作用によりむし歯菌の働きを抑え、酸の産生
を抑制させます。

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歯科医院におけるフッ化物応用、プロフェッショナルケアについて説明します。
プロフェッショナルケア(フッ化物歯面塗布)とは 歯科医院などで専門家が定期的(3〜6ヶ月に1回)に行う方法です。
製剤としてはフルオール・ゼリーなどがあります。 推奨濃度:は9000 ppmです。むし歯抑制率は30〜40%とされています。
フルオール・ゼリーなどを使用する際は、「低年齢児にはトレイ法を避け、綿球塗布で2 mL以内を厳守する」ことが大切です。
*石塚洋一ほか(2025年)「近年のフッ化物応用をめぐる科学的思考」
この論文では、WHOが6歳未満への「フッ化物洗口」を推奨しないとしている点に対し、日本の状況(集団実施の管理体制)から有効性を再定義しています。
プロフェッショナルケアの安全性: 日本では歯科医師・衛生士が塗布を管理するため、6歳未満でも「2 mL以下の用量遵守」を条件に、高濃度塗布を推奨できるとしています。
海外で主流とされるフッ化物バーニッシュ(22,600 ppm)ですが、日本においては未承認なので、9000 ppmのゲル(フルオール・ゼリー等)を適切に使用することが重要と言われています。

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フッ化物洗口については広く使われる製品でミラノールがあります。
フッ化物洗口は、とくにポピュレーションアプローチとしての価値が高いとされています。
ポピュレーションアプローチとは、「集団」に対して健康増進や疾病予防を図る手法です。(健康診断などで疾病発症の可能性が高い人を明らかにして、個人への介入を行うことはハイリスクアプローチと言われます。)
フッ化物洗口は永久歯萌出期の4歳頃から12~14歳頃まで継続実施すると高いむし歯予防効果が得られるとされ、園・学校などでの集団実施は、受診行動や家庭環境に左右されにくい予防手段として重要であると整理されています。
その有効性については、Cochraneレビューで、フッ化物洗口は子ども・思春期の永久歯むし歯の増加を有意に抑制し、DMFS増加を平均27%減少させると報告されています。
また、日本の都道府県レベルの解析では、学校でのフッ化物洗口の普及が高い地域ほど12歳児のむし歯経験が少なく、さらに地域間のむし歯格差縮小にも関連していたとされます。
これは、フッ化物洗口が単なる個人予防ではなく、健康格差を縮小しうる公衆衛生施策であることを示していると言えるでしょう。フッ化物配合歯みがき剤が普及した現在においてなお、集団フッ化物洗口はポピュレーションアプローチとして必要とされています。
乳幼児・小児のむし歯予防を実務的に整理すると、0~3歳頃は歯面塗布を中心とした個別的な一次予防、4歳頃以降は歯面塗布に加えて集団フッ化物洗口を組み合わせるポピュレーションアプローチ、そして健診や定期受診を通じて初期病変や高リスク児を拾い上げる二次予防、さらに進行するむし歯に対する適切な治療と継続管理による三次予防を重ねることが重要です。つまり、歯面塗布と洗口は競合する手段ではなく、年齢、発達段階、生活環境、地域の実施体制に応じて補完し合う関係にあると言えます。

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セルフケアについてですが、フッ化物配合歯磨剤の年齢別指針 2023年の4学会合同推奨に基づき、暦年齢に応じた適応が重要です。
歯の生え始め〜2歳: 1000 ppm を 米粒程度 (1〜2mm)
3歳〜5歳: 1000 ppm を グリーンピース程度 (5mm)。
6歳以上(成人含む): 1500 ppm を 歯ブラシ全体 (1.5〜2cm)
セルフケアの予防効果として むし歯抑制率は20〜30%とされています。
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article22/

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洗口法(うがい)が最も高い抑制率を示しますが、3つの手法は「実施場所」と「頻度」の役割が異なる点に注目してください。

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参考文献
1. 石塚洋一, ほか. 近年のフッ化物応用をめぐる科学的思考(第一報)―WHOの推奨と日本の状況を踏まえて―. 口腔衛生学会雑誌. 2025;75(2):68-76.
2. 石塚洋一, ほか. 近年のフッ化物応用をめぐる科学的思考(第二報)―集団フッ化物洗口の効果と健康格差縮小の観点から―. 口腔衛生学会雑誌. 2025;75(3):124-131.
3. e-ヘルスネット. フッ化物歯面塗布. 健康日本21アクション支援システム.
4. 厚生労働省研究班. フッ化物洗口マニュアル(2022年版)を含む研究報告書. 2022.
5. 厚生労働省. 「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」について(令和4年12月28日通知).
6.. Matsuyama Y, et al. School-Based Fluoride Mouth-Rinse Program Dissemination Associated with Decreasing Dental Caries Inequalities between Japanese Prefectures: An Ecological Study. J Epidemiol. 2016;26(11):563-571.






